
「腰の下の方が、いつも片側だけ痛い」
「椅子から立ち上がるときや、寝返りをすると痛みが走る」
「腰のMRIを撮ったけれど、痛みの原因がはっきりしない」
そんな症状でお困りではありませんか?
その痛み、もしかすると「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」が関係しているかもしれません。
腰痛というと、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、腰の下やお尻の痛みの原因は、それだけではありません。
仙腸関節に由来する痛みには、ブロック注射によって症状の軽減を目指せる場合があります。
今回は、仙腸関節性疼痛の特徴と、ペインクリニックで行うブロック治療について、医学的な研究を交えて解説します。
仙腸関節とは?腰痛の原因になることも
仙腸関節は、背骨の一番下にある「仙骨」と、骨盤を構成する「腸骨」の間にある関節です。
左右のお尻の上あたりに位置し、上半身と下半身をつなぐ役割を担っています。
仙腸関節の動きはわずかですが、周囲の靱帯や関節組織などが痛みに関係する場合があります。
仙腸関節に由来する痛みは、一般に「仙腸関節性疼痛」と呼ばれます。
2025年に発表された国際的な診療ガイドラインでも、仙腸関節とその周囲の組織は、慢性腰痛の重要な痛みの発生源の一つとして取り上げられています。
仙腸関節性疼痛に特徴的な症状とは?
仙腸関節性疼痛では、次のような症状がみられることがあります。
✅ 腰の下やお尻の片側が痛い
✅ 椅子から立ち上がるときに痛む
✅ 寝返りや起き上がりで痛みが出る
✅ 階段を上るときに痛む
✅ 長時間立っていると腰やお尻がつらい
✅ 腰の下の特定の場所を指で示せる
痛みがお尻から太ももに広がる場合もあり、坐骨神経痛と似た症状になることがあります。
ただし、こうした症状だけで仙腸関節性疼痛と診断できるわけではありません。
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、股関節疾患などとの鑑別が重要です。
MRIで異常がなくても仙腸関節が原因のことがある?
腰痛の原因を調べる際、レントゲンやMRIは重要な検査です。
しかし、通常の画像検査だけでは、仙腸関節が痛みの原因かどうかを判断しにくいことがあります。
そのため、診察では痛みの場所や、どのような動作で痛むのかを詳しく確認します。
仙腸関節に負荷をかけて痛みが再現されるかを調べる徒手検査も、診断の参考になります。
ただし、複数の徒手検査を組み合わせても、確実に仙腸関節性疼痛と診断できるわけではありません。
診察所見と画像所見を総合的に判断し、必要に応じて診断的ブロックを検討することが重要です。
仙腸関節ブロックとは?
仙腸関節ブロックは、仙腸関節やその周囲の痛みに関係する部位に、局所麻酔薬などを注射する治療です。
主に、次の2つの役割があります。
① 痛みの原因を調べる
仙腸関節が痛みの原因として疑われる場合、局所麻酔薬を用いたブロックによって、痛みがどの程度変化するかを確認します。
注射後に普段の痛みが明らかに軽減すれば、仙腸関節が痛みの原因に関係している可能性を考える手がかりになります。
ただし、ブロックの反応だけで必ず診断が確定するわけではありません。
② 痛みを和らげる
仙腸関節ブロックには、痛みを和らげる治療としての役割もあります。
局所麻酔薬によって痛みの伝達を抑え、症状の軽減を目指します。
また、研究では仙腸関節内や周囲にステロイドを投与する治療も検討されており、適切に患者さんを選択した場合には、短期的な痛みの軽減が期待できることが報告されています。
注射する場所や使用薬剤は、症状と治療目的によって異なります。
仙腸関節ブロックの効果には医学的な根拠があります
2025年に発表された国際的な多職種コンセンサスガイドラインでは、仙腸関節に由来する痛みに対する注射治療の有効性が検討されています。
このガイドラインでは、適切に選ばれた患者さんにおいて、仙腸関節内や関節周囲へのステロイド注射で、少なくとも4週間程度の痛みの軽減が得られることが報告されています。
また、2023年に発表された83人を対象としたランダム化比較試験では、X線透視下で行った仙腸関節内へのステロイドと局所麻酔薬の注射は、対照群と比較して、2週間後と4週間後の疼痛や生活機能の評価で良好な結果を示しました。
これらの研究は、仙腸関節性疼痛に対する注射治療が、有効な選択肢となることを支持しています。
ただし、研究で評価された注射の部位や薬剤によって結果は異なり、すべてのブロック注射に同じ効果があるとは限りません。
また、効果の程度や持続期間には個人差があります。
ブロック注射とリハビリを組み合わせる理由
仙腸関節性疼痛が続くと、立ち上がる、歩く、寝返りをするといった日常動作がつらくなることがあります。
痛みを避ける生活が長くなることで、身体を動かす機会が減ってしまう方もいます。
そのため、当院では痛みそのものへの治療に加え、身体機能を改善するためのリハビリテーションも重視しています。
理学療法士が身体の状態を評価し、必要に応じて股関節や体幹の運動、日常動作の指導などを行います。
当院が目指すのは「痛みの軽減」と「動きやすい身体」
神経ブロックなどによる痛みの治療
理学療法士による運動療法
医師による診察と治療方針の調整
これらを組み合わせ、患者さんそれぞれの症状や生活に合わせた治療を行います。
「椅子から立ち上がるときの痛みを減らしたい」
「長時間の外出ができるようになりたい」
「趣味や仕事を続けたい」
そうした具体的な目標を大切にしています。
なお、仙腸関節ブロックとリハビリを組み合わせることで、必ず治療効果が高まると証明されているわけではありません。症状に応じて無理のない治療を行うことが重要です。
詳しくは当院のリハビリテーション科をご覧ください。
❓ 仙腸関節ブロックについてよくある質問
Q. 仙腸関節の痛みは自然に治りますか?
一時的な負荷による痛みでは、時間とともに改善することもあります。しかし、痛みが長引く場合には、原因を評価し、適切な治療を検討することが大切です。
Q. ブロック注射は痛いですか?
注射の際には針を刺す痛みや薬液を注入する際の違和感が生じることがあります。痛みの感じ方には個人差があるため、不安がある方は診察時にご相談ください。
Q. 何回くらいブロック注射を受ければよいですか?
必要な回数は症状や注射後の反応によって異なります。決められた回数を全員に行うわけではなく、経過を確認して判断します。
Q. ブロック注射に副作用はありますか?
出血、感染、アレルギー反応、一時的なしびれなどのリスクがあります。抗凝固薬の使用状況や感染症の有無なども含めて確認し、安全性に配慮して実施します。
腰の下・お尻の痛みが続く方はペインクリニックへ
長く続く腰痛の中には、仙腸関節が関係しているものがあります。
特に、腰の下やお尻の片側が痛い方、寝返りや立ち上がりで痛む方、検査を受けても原因がはっきりしない方は、痛みの原因を改めて評価することが大切です。
なかお三国ペインクリニックでは、ペインクリニック専門医による診察と神経ブロック治療、理学療法士によるリハビリテーションを組み合わせ、患者さん一人ひとりに合った治療を検討します。
「なかなか治らない腰痛だから」と諦めず、一度ご相談ください。
大阪市淀川区・三国・新大阪周辺の方はもちろん、豊中市・吹田市・箕面市など北摂地域からの受診もお待ちしております。
参考文献
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Patel A, et al. Effect of Fluoroscopic-Guided Corticosteroid Injection in Patients With Sacroiliac Joint Dysfunction. Cureus. 2023;15(3). PMID: 37090293. DOI: 10.7759/cureus.36406. PubMed
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Saueressig T, et al. Diagnostic Accuracy of Clusters of Pain Provocation Tests for Detecting Sacroiliac Joint Pain: Systematic Review With Meta-analysis. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2021;51(9):422–431. PMID: 34210160. DOI: 10.2519/jospt.2021.10469. PubMed






