
「五十肩と言われてリハビリをしているけれど、痛くて腕を動かせない」
「夜中に肩が痛くて目が覚める」
「痛いけれど、無理にでも動かした方がいいのでしょうか?」
こうした相談は少なくありません。
五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれることが多く、その中でも肩関節の動きが強く制限される状態を「凍結肩(frozen shoulder、癒着性関節包炎)」と呼びます。
治療では肩を動かすことが重要です。
ただし、強い痛みを我慢しながら無理やり動かせばよい、という意味ではありません。
特に夜も眠れないほど痛みが強く、リハビリそのものができない場合には、
「まず痛みを軽減する」
↓
「動かせる状態をつくる」
↓
「リハビリで可動域を回復させる」
という考え方も大切です。
五十肩では、なぜ腕が上がらなくなる?
凍結肩では、肩関節を包んでいる「関節包」に炎症や線維化などが起こり、肩の動きが制限されます。
特徴的なのは、自分で腕を上げにくいだけでなく、他人に動かしてもらっても動きにくくなることです。
| 症状 | 凍結肩でよくみられる特徴 |
|---|---|
| 腕を上げると痛い | ○ |
| 夜、肩が痛む | ○ |
| 背中に手を回しにくい | ○ |
| 他人が動かしても硬い | ◎ |
ただし、「肩が痛くて腕が上がらない=すべて五十肩」ではありません。
腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、変形性肩関節症、そして頚椎疾患などでも似た症状が出ます。
以前の記事でも解説したように、肩そのものではなく首から肩へ痛みが出ている場合もあります。
首のヘルニアで肩が痛くなる?「五十肩だと思っていた」痛みが首から来ていることがあります
「五十肩は放っておけば治る」は本当?
五十肩には自然経過で改善する患者さんもいます。
しかし、
「そのうち治るから何もしなくていい」
と全員に言える病気ではありません。
痛みや可動域制限が長期間続き、着替え、洗髪、仕事、睡眠など日常生活に大きな支障が出る方もいます。
特に問題になるのが、
「痛いから動かさない」
↓
「さらに肩が硬くなる」
↓
「動かすともっと痛い」
↓
「さらに動かさなくなる」
という悪循環です。
五十肩ではリハビリが重要。でも「痛いほど動かす」は違います
リハビリでは、肩の状態に応じて可動域訓練や運動療法などを行います。
運動療法や関節モビライゼーションについては複数の臨床研究がありますが、研究ごとに治療内容や頻度が異なり、「全員にこの方法が最適」と断定できるほど単純ではありません。systematic reviewでも、患者さんの症状や可動域に合わせて運動量や関節モビライゼーションを調整する必要性が指摘されています。PubMed
つまり、
五十肩のリハビリは「痛くても無理やり動かす」のではなく、痛みの程度と肩の硬さを見ながら進めることが重要です。
当院では、医師が診断したうえで、理学療法士が可動域や動作を評価しながらリハビリを行っています。
痛くてリハビリできない場合はどうする?
ここがペインクリニックとして重要なところです。
肩を動かした方がよいと分かっていても、
「痛くて動かせない」
という患者さんがいます。
そのような場合には、痛みを軽減してからリハビリを進めるという方法があります。
治療選択肢の一つが神経ブロックです。
肩の痛みに関係する神経の一つに「肩甲上神経」があります。
肩甲上神経ブロック(suprascapular nerve block:SSNB)は、この神経の周囲へ局所麻酔薬などを投与し、肩の痛みを軽減する治療です。
2022年のランダム化二重盲検試験では、関節内注射+理学療法に肩甲上神経ブロックを追加した群で、プラセボ注射を追加した群と比べ、症状が改善するまでの期間が短く、疼痛や可動域なども良好でした。PubMed
一方で、神経ブロックの効果については研究結果がすべて一致しているわけではありません。
2026年に報告された96人のランダム化試験では、関節内ステロイド注射に肩甲上神経ブロックを追加しても、12週時点では臨床的に意味のある追加効果は確認されませんでした。注射直後の鎮痛などには差がみられています。PubMed
これは非常に重要です。
「五十肩には神経ブロックをすれば治る」
という話ではありません。
神経ブロックは、痛みを軽減して睡眠や日常生活を改善したり、リハビリを行いやすい状態を作ったりするための選択肢の一つ、と考える方が適切です。
「注射かリハビリか」ではありません
五十肩の治療を、
「注射をするか」
「リハビリをするか」
の二択で考える必要はありません。
痛みが非常に強い時期には痛みを軽減する治療を行い、そのうえで肩を動かせる状態にしていく。
この組み合わせが重要な患者さんもいます。
なかお三国ペインクリニックでも、神経ブロックなどの疼痛治療と理学療法士によるリハビリテーションを組み合わせた診療を行っています。なかお三国ペインクリニック
⚠️ 本当に五十肩なのか、一度確認した方がよい症状
次のような場合には、「年齢的に五十肩だろう」と自己判断せず、一度診察をおすすめします。
・転倒してから突然腕が上がらなくなった
・肩に力が入らない
・手までしびれる
・首を動かすと肩や腕が痛む
・肩が赤く腫れて熱を持っている
・発熱がある
・強い痛みが続いて眠れない
・数か月治療しても改善しない
特に「肩が動かない」のか、「痛くて動かせない」のか、「筋力が落ちて動かせない」のかで原因は変わります。
診断が違えば、当然治療も変わります。
大阪市淀川区・三国・東三国・新大阪周辺で、夜も眠れない肩の痛みや、長引く五十肩にお困りの方はご相談ください。
❓よくある質問
Q. 五十肩は無理にでも動かした方が早く治りますか?
強い痛みを我慢して無理に動かせばよいわけではありません。
痛みの強さや可動域、病期に応じて運動量を調整する必要があります。
Q. 夜に肩が痛くて眠れません。五十肩でしょうか?
五十肩でも夜間痛はみられます。
ただし、腱板疾患など別の肩疾患でも夜間痛は起こります。夜間痛だけで五十肩と診断することはできません。
Q. 神経ブロックをすれば五十肩そのものが治りますか?
神経ブロックは主として痛みを軽減するための治療です。
一部の臨床試験では症状改善までの期間短縮などが報告されていますが、最近のRCTでは関節内ステロイドへの追加効果が限定的だったという結果もあります。神経ブロックだけで五十肩が治ると考えるのは適切ではありません。PubMed
Q. リハビリと神経ブロックは同時にできますか?
患者さんの状態に応じて組み合わせることがあります。
痛みが強くリハビリが進まない場合には、痛みを軽減したうえで可動域訓練や運動療法を行うという考え方があります。
まとめ
五十肩では、肩を適切に動かしていくことが重要です。
ただし、
「痛いほど動かした方がよい」
わけではありません。
夜も眠れないほど痛い、痛くてリハビリができないという場合には、痛みを軽減する治療を組み合わせる選択肢があります。
大切なのは「五十肩だから」と一括りにせず、本当に凍結肩なのか、今は痛みを抑える時期なのか、どの程度動かすべきなのかを評価して治療することです。
参考文献
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Shanahan EM, Gill TK, Briggs E, et al. Suprascapular nerve block for the treatment of adhesive capsulitis: a randomised double-blind placebo-controlled trial. RMD Open. 2022;8(2):e002648. PMID: 36418088. DOI: 10.1136/rmdopen-2022-002648. PubMed
-
Kirker K, O’Connell N, Bradley L, et al. Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis: a systematic review with meta-analysis. J Man Manip Ther. 2023. PMID: 36861780. PubMed
-
Elango Y, Adinarayanan S, Swaminathan S, et al. Comparison of the analgesic efficacy of intra-articular steroid injections and its combination with suprascapular nerve block for adhesive capsulitis of the shoulder joint: a randomized clinical trial. Reg Anesth Pain Med. 2026;51(4):404-410. PMID: 39709187. DOI: 10.1136/rapm-2024-105902. PubMed






