
「骨密度は正常と言われていたのに、圧迫骨折しました」
診察をしていると、ときどきこのような患者さんがおられます。
骨密度が正常なら骨は丈夫なはず。
そう思いますよね。
でも実際には、骨密度が正常範囲でも背骨の圧迫骨折を起こすことがあります。
今回は、「骨密度の数字は悪くないのに、なぜ骨折するの?」という疑問についてお話しします。
🦴 そもそもYAMって何?
骨密度の検査を受けると、
「YAM 85%です」
「若い人と比べて70%くらいです」
などと説明されることがあります。
YAMとは、若い成人の平均的な骨密度を100%として、自分の骨密度がどの程度あるかを示した数字です。
骨粗鬆症を考えるうえで、とても大切な指標です。
ただ、ここで一つ知っておいてほしいことがあります。
💡 骨の強さは、骨密度だけでは決まりません。
骨の量だけでなく、骨の構造や骨質、年齢、これまでの骨折歴、転倒しやすさなども関係しています。
骨密度が正常でも、圧迫骨折は起こります
実際に、50歳以上で椎体骨折を起こした1,807人を調べた研究があります。
その中で、DXA検査による骨密度が正常範囲だった人は7.9%いました。[1]
つまり、
「骨密度が正常だから骨折ではない」
「YAMが高いから骨は大丈夫」
とは言い切れません。
骨密度はとても大切な検査ですが、骨の状態を見る一つの物差しと考えた方がよいでしょう。
腰痛には圧迫骨折以外にも、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、筋肉由来の痛みなどさまざまな原因があります。
腰痛全般については、当院HPの
腰痛の原因と治療について
でも詳しく説明しています。
🔍 圧迫骨折が見つかったら、骨折だけを見ないことが大切
圧迫骨折を診断したとき、私たちは折れた背骨だけを見ているわけではありません。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 骨密度 | 骨の量を調べる |
| 過去の骨折 | 次の骨折リスクを考える |
| 転倒歴 | 再骨折予防につながる |
| 薬や持病 | 骨が弱くなる原因を探す |
必要に応じてレントゲン、MRI、骨密度検査、血液検査などを組み合わせます。
特に50歳を過ぎてから、尻もちや軽い転倒などで骨折した場合には、
「転んだから折れただけ」
で終わらせないことが大切です。
骨折をきっかけに、骨粗鬆症が初めて見つかることもあります。
骨折や骨粗鬆症を含めた整形外科診療については、
当院の整形外科について
もご覧ください。
⚠️ 一度骨折すると「次の骨折」が起こりやすくなります
圧迫骨折で私が特に気にしているのは、その後の骨折です。
骨粗鬆症による骨折を起こした人では、最初の骨折から比較的早い時期に、次の骨折が起こりやすいことが分かっています。
世界の研究をまとめたメタ解析では、骨粗鬆症性骨折を起こした後の再骨折は、
1年以内:約7.6%
2年以内:約11.6%
でした。
さらに、長期的に起こる再骨折の約半数が、最初の骨折から2年以内に集中していました。[2]
ですから、圧迫骨折の診療では、
「今の腰痛を治す」
だけではなく、
「次の骨折をどう防ぐか」
まで考えることが大切です。
痛みがなくなったら、もう大丈夫?
これもよく聞かれる質問です。
圧迫骨折による痛みは、時間の経過とともに軽くなることがあります。
でも、
「痛みがなくなった」ことと
「骨折しやすさがなくなった」ことは別です。
骨折後は、骨密度だけでなく、年齢や過去の骨折歴なども含めて今後のリスクを評価します。
50歳以降に起きた骨折は、将来の骨折リスクを考えるうえで重要なサインとされています。[3]
💊 骨粗鬆症の治療は、YAMだけでは決めません
「YAMが何%になったら薬を飲むんですか?」
これも診察室でよく聞かれます。
もちろん骨密度は重要です。
ただ、実際には骨密度だけで治療を決めているわけではありません。
年齢、骨折した部位、これまでの骨折歴、腎機能、持病、使用している薬などを確認しながら、一人ひとり治療方針を考えます。
特に最近圧迫骨折を起こした方や、すでに複数回骨折している方は、将来の骨折リスクをより慎重に考える必要があります。
🏃 骨を守るには「転ばない体づくり」も大切
再骨折を防ぐためには、骨の治療だけでなく転倒予防も重要です。
年齢とともに下肢の筋力やバランス能力が低下すると、転倒そのものが増えてしまいます。
患者さんの状態によっては、筋力や歩行能力を維持するためのリハビリテーションも組み合わせます。
当院では、医師と理学療法士などが連携して、骨折後や腰痛に対するリハビリテーションを行っています。
詳しくは、
当院のリハビリテーション科について
をご覧ください。
🚨 こんな腰痛は、一度受診をおすすめします
次のような場合には、単なる腰痛と思わず一度確認した方がよいでしょう。
・転倒したあとから急に腰が痛くなった
・寝返りや起き上がりで強く痛む
・以前より身長が低くなった
・過去にも圧迫骨折をしたことがある
・骨密度が低いと言われている
・高齢になってから、きっかけなく急に腰が痛くなった
骨が弱くなっている方では、はっきりした転倒がなくても圧迫骨折を起こすことがあります。
「圧迫骨折かもしれない」「骨密度も一度調べてほしい」という方は、WEBから初診予約が可能です。
まとめ
骨密度は、骨折リスクを考えるうえでとても大切な検査です。
ただし、
「YAMが高いから絶対に骨折しない」
というわけではありません。
特に圧迫骨折を一度起こした方では、今の骨折を治療するだけでなく、その後の骨折をどう防ぐかまで考えることが大切です。
大阪市淀川区・三国、新大阪周辺で、転倒後の腰痛、圧迫骨折、骨粗鬆症について気になることがあればご相談ください。
当院では整形外科診療、痛みの治療、リハビリテーションを組み合わせながら診療しています。
よくある質問
Q. YAMが80%以上でも圧迫骨折することはありますか?
あります。
骨折リスクは骨密度だけでは決まりません。
実際に、骨密度が正常範囲でも椎体骨折を起こしている患者さんが報告されています。[1]
Q. 圧迫骨折したら全員、骨粗鬆症の薬が必要ですか?
全員が同じ治療になるわけではありません。
年齢、骨折の原因や部位、骨密度、過去の骨折、持病などを総合して判断します。
Q. 圧迫骨折の痛みがなくなれば治療終了ですか?
骨折による痛みが改善していても、再骨折予防は別に考える必要があります。
特に骨折後の1〜2年間は、次の骨折に注意が必要です。[2]
参考文献
-
Kadri A, Binkley N, Daffner SD, Anderson PA. Clinical risk factor status in patients with vertebral fracture but normal bone mineral density. Spine J. 2022;22(10):1634-1641. PMID: 35680015. DOI: 10.1016/j.spinee.2022.05.019.
PubMed -
Wong RMY, Wong PY, Liu C, et al. The imminent risk of a fracture-existing worldwide data: a systematic review and meta-analysis. Osteoporos Int. 2022;33(12):2453-2466. PMID: 35776148. DOI: 10.1007/s00198-022-06473-0.
PubMed -
LeBoff MS, Greenspan SL, Insogna KL, et al. The clinician’s guide to prevention and treatment of osteoporosis. Osteoporos Int. 2022;33(10):2049-2102. PMID: 35478046. DOI: 10.1007/s00198-021-05900-y.
PubMed






