
こんにちは。
大阪市淀川区・三国駅近くのなかお三国ペインクリニック院長の中尾です。
「薬を飲んでも痛みが取れない」
「痛いからリハビリなんてできない」
「痛いときは、やっぱり安静にすべき?」
そんな悩みをお持ちの方へ。
実は、痛みには“安静が必要な痛み”と“動かすことで改善する痛み”があるのをご存じでしょうか?
今回は、痛みのタイプと正しい対応、そして最近注目されている“EIH;Exercise-Induced Hypoalgesia (運動による疼痛緩和)”という体のしくみについて、わかりやすくご紹介します。
急性痛と慢性痛の違い
痛みは、大きく「急性痛」と「慢性痛」に分けられます。
急性痛は、ケガや手術直後などの鋭い痛みで、体を守る信号でもあるため、基本的には安静が必要です。
一方、慢性痛とは3か月以上続く痛みのことで、神経や脳が痛みを“記憶”してしまっている状態のこともあります。
慢性痛では、過度に安静にすると筋力低下や関節のこわばりで、かえって痛みが強くなる…という悪循環に陥ることがあります。
“動かすと痛みが楽になる”理由|EIHとは?
EIH(運動による疼痛緩和)とは、軽い運動によって脳から「エンドルフィン」や「セロトニン」などの鎮痛物質が分泌され、痛みがやわらぐ現象です。
興味深いのは、痛みがある場所を直接動かさなくても効果があるという点です。
たとえば、手が痛い方が足をゆっくり動かす運動をするだけで、手の痛みが軽くなったという例もあります。
これは、運動によって脳が“痛みを抑えるモード”に切り替わり、全身の痛みに良い影響を与えるためです。
そのため、患部を無理に動かす必要はなく、動かしやすい部位から始めていただいても十分に効果が期待できます。
無理のない運動で十分に効果があります
以下のような軽い運動でも、EIHの効果が期待できます。
運動の種類 | 時間の目安 | ポイント |
---|---|---|
🚶♂️ ウォーキング | 10〜20分 | 会話できるペースでOK |
🚴♀️ バイクこぎ | 10〜15分 | 軽い負荷で大丈夫 |
🤸♂️ ストレッチ体操 | 5〜10分 | ゆっくりと大きな動作を意識 |
🪑 椅子での足上げ | 無理のない範囲 | 座ったままでも効果あり |
体調や痛みの程度に応じて、無理なく取り組めるものから始めてみてください。
神経ブロックと運動療法の組み合わせ
「痛みが強くて、運動なんて無理…」という方には、当院ではまず神経ブロック注射で痛みを軽減し、その後に無理のない範囲で運動療法を始めていただく方法をおすすめしています。
ブロック注射によって痛みが和らぐと、体が動かしやすくなり、運動によるEIHの効果も得やすくなります。
このように、神経ブロックとリハビリを組み合わせることで、回復の好循環が期待できます。
まとめ
「痛いときは動かさないほうがいい」
この考え方は、急性の痛みに対しては正しいですが、慢性的な痛みの場合は、むしろ“適度に動かすこと”が大切です。
なかお三国ペインクリニックでは、神経ブロックと運動療法を組み合わせて、痛みに根本から向き合う治療を行っています。
「この痛みはもう治らないのでは」と悩まれている方も、どうかあきらめずに、一度当院へご相談ください。
参考文献
・日本ペインクリニック学会『慢性疼痛診療ガイドライン(2021年改訂版)』
・Naugle et al., Exercise-Induced Hypoalgesia in Chronic Pain Populations, Sports Medicine, 2012
・Treede RD et al., A classification of chronic pain for ICD-11, Pain, 2015
※本記事は、上記の文献や臨床知見をもとに、患者さんにもわかりやすく構成しています。